微分法 学校で教えてくれないライプニッツ表記の基本
先日、知人から微分のライプニッツ表記に関する質問をいただき、この表記法を見直すとても良い機会となった。
素朴な疑問を抱かなくなってしまった数学人にとって、これほどためになる機会は存在しない。
そのときの解説資料を以下にまとめておく。
現在、微分法解説書を執筆している真っ最中だが、これをふまえてさらに加筆修正する予定。(草稿執筆段階で良質な質問をいただけたことは本当に幸運だ。もしも清書が終わった後だったら…orz)
『魔法をかけますよー』という合図の記号を演算子という。
演算子と何かをかけ算することは、その何かに魔法をかけることを意味する。
すなわち、演算子を『かける』ことで魔法を『かける』ことになる。日本語って秀逸ですね…
d/dxを左からかけられたものはxで微分される(微分という魔法がかかった)
d/dxを微分演算子という。
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y=f(x)のとき、(d/dx)f(x)は(d/dx)yとも表せる。
このとき、yを分子に乗せて略記したものがdy/dxである。
このように、dy/dxのyは形式的にdとは独立のものとみなすことも可能である。(本来はひとかたまりのものではあるが)
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d/dxを2回かけることは、指数の素朴な定義より、(d/dx)²をかけることとみなせる。
この意味で、2階微分はd²y/dx²と表される。
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ここで注意すべきなのは、dxはひとかたまりのものでしかないという認識の下、(dx)²をdx²と略記しているということである。
決してdを1つ、xを2つかけたというわけではない。
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以上のことをふまえると、写真のような変形が可能になる。
最後の式は、『dy/dx(xで微分して得た導関数)にさらに微分という魔法をかけた』ということを表す。
このように、2階微分とは『導関数を微分すること』ともみなせる。
上の写真の式変形を瞬時に行うには、次のように考えればよい。
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【発展事項】
『dy/dxは分数ではない』という言葉の真意は、次のようなものである。
・dyやdxは、本来ひとかたまりのものであるから、dとの積と考えてdを約分してはいけない。
・dy/dxは『dx分のdy』とは読まない。
この2点のみが重要なのであって、このことを『dy/dxは分数ではない』という言葉に含めてしまうことは適切ではない。
実際、dy/dx=f(x)の両辺にdxをかけて、dy=f(x)dxという表記をすることが大学数学ではよくある。理工学部であれば、微分方程式を解く際にこのような記法をよく用いる。このような表記を正当化する微分形式という数学の分野も存在する。(微分形式は、dy/dxというひとまとまりだけではなく、dyやdx単体にも意味をもたせようという分野である。)
そもそも、割線の傾きΔy/Δxにおいて、幅Δxを無限小にしたものがdy/dxであり、これが接線の傾きを表す以上、dy/dxはdyとdxの分数(比)なのである。…このことについては図解をつけて解説したものをClearに掲載したい。