CTANから入手可能な化学パッケージの特色一覧【TeXで化学ノートを作りたい】
化学界でのTeX普及率は低く、TeXで化学文書を作ろうにも情報が少ない。
日本語の解説が無いのなら、自らの手で英語の解説を翻訳するのみである。
というわけで、まずは下記のページのリストに載っている化学パッケージのpackage documentationを読み漁ってみた。
未来の自分自身、もしくはTeXで化学を表現したいという野望を抱く同士達の道標とするために、そこから読み取れた各パッケージの特色をざっくりまとめておく。
chemformula【高校化学ならこれで十分】
・イオン式
・組成式
・化学反応式(触媒を矢印の上に表示可能)
・電子式
・化学反応式を電子式で(電子配置を下に添えることも可能)
mhchem
・イオン式
・組成式
・化学反応式
・水素結合
chemfig【自由度MAXの構造式描画】
・やや面倒だがどんな構造式も書こうと思えばかける(価標を一本ずつ描くイメージ、結合角も指定可能)
・巻矢印
・電子式
・錯体の構造式
xymtex【大学有機化学の教科書をまるごと組版できそうな万能っぷり、IUPAC命名法の知識が身につく】
・有機化合物の構造式ならほぼなんでも描ける
・IUPAC名によく似たコマンド名
・イス型構造
・架橋
・縮合環(炭素に番号をつけてくれる機能つき)
・構造式の一部や原子に色をつけられる
・反応式の重要な箇所を色四角で囲める
・ハワース式
・ニューマン式
・錯体
・正四面体構造が一目で分かる図
・一つの化合物を違う視点から見た構造式が描ける
・高分子化合物
・各原子の所有電子→電子の共有→結合の形成という流れが分かる構造式
・電子式
・複数の環にABCD…という文字を入れて区別
・ベンゼン環の様々な限界構造
・ヘリセン
・巻矢印を用いた反応機構や共鳴構造
・2本の半反応式を辺辺加えて反応式をつくる
・紙を積み重ねたようなオシャレな枠囲み
bpchem
・cis、transが自動でイタリック体になるコマンド
・ハプト数の記号が簡単に出力できるコマンド
chemmacros【物理化学にも配慮】
・酸解離定数などの記号
・丸囲み電荷
・δ電荷
・IUPAC名の書体を自動で整えてくれるコマンド
・イタリックにすべき文字(指示水素etc.)を自動でイタリックにしてくれるコマンド
・RS表記の回転方向の矢印
・ハプト数の表示
・フィッチャー式のDLを自動で小さく表示してくれるコマンド
・熱化学方程式
・理想気体の記号
・同位体
・高分子化合物
・ニューマン投影式
・オービタル
・化学反応式
・酸化還元の矢印表示
・NMR
・エンタルピー
bohr
・ボーア模型による電子配置の図
carbohydrates
・(形にこだわらなければ)糖の構造式を簡単にかける
chemexec
・よく使うイオンを一発で出力
・丸囲みの+,-(形式電荷)
・電子や陽子記号
・RS表記の回転方向の矢印
chemscheme
・e.g.やi.e.やetc.などをイタリックで表示してくれるコマンド
chemschemex
・円形(有機金属化学反応、生化学反応によくある、同じ反応をぐるぐる繰り返すタイプ)の反応式を描ける
chemstruct
・ベンゼン環の限界構造式(ただしちょっと歪)
・金属錯体の構造式
・生体高分子化合物
elements
・電子配置の横書き表記(1s^2 2s^2…)を簡単に出力できる
endiagram
・化学反応のエネルギー変化のグラフ
ghsystem
・毒性・引火性などの警告マーク
lewis
・電子式を簡単に出力できる
mcf2graph
・手描きで描くときと同じ感覚で構造式を描ける(主観)
・usepackageしてすぐに使えるコマンド形式の命令ではないため、使える状態に至るまでの環境構築が結構大変
modiagram
・分子軌道法ダイアグラム
mol2chemfig
・炭素に番号をつけた有機化合物構造式
・巻矢印
mychemistry【反応機構に特化】
・一つの化合物から多数の化合物ができる反応式
・構造式の大きさを簡単に変更
・色線で構造式を描く
・構造式や反応式を色つき四角で囲む
・巻矢印
・共鳴構造
・生化学反応
・光化学反応
・縦書きの反応式
・カップリング反応
pst-labo
・化学実験の図(しかもカラーでめちゃくちゃ可愛い)
streetex
・有機化合物のスペクトル
・炭素を・で表した構造式
texshade
・ゲノム
tikzorbital
・分子軌道法ダイアグラム
・電子軌道や混成軌道の図